今月の表紙の筆蹟と写真は、村上龍さん。
波 2020年5月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2020/04/28 |
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JANコード | 4910068230508 |
定価 | 100円(税込) |
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第32回
【島田雅彦『スノードロップ』刊行記念】
[対談]島田雅彦×望月衣塑子/皇后陛下が立ち上がる時
【沢木耕太郎『旅のつばくろ』刊行記念】
[インタビュー]沢木耕太郎/16歳の旅へ
【朝井まかて『
川本三郎/大正時代の「芸術の人」を描く
[インタビュー]角野卓造/舞台に立つことの恐怖と快感
村上 龍『MISSING 失われているもの』
斎藤 環/媒介としての「母なる幻想」
伊藤比呂美『道行きや』
ブレイディみかこ/生きることは、「ミスする」こと
ベルンハルト・シュリンク、松永美穂/訳『オルガ』
山崎佳代子/小さな幸せという救い
安部龍太郎『迷宮の月』
芳地隆之/十ヶ月のドラマの背後に広がる悠久の歴史
萩尾望都、芸術新潮編集部/編『萩尾望都 作画のひみつ』(とんぼの本)
最果タヒ/人間を更新する
小泉武夫『食いしん坊発明家』
平松洋子/チョイとひと舐めしてみたい、風味絶佳の半生記
【遠田潤子『銀花の蔵』刊行記念】
[インタビュー]遠田潤子/血縁関係に縛られない家族のかたち
ミシェル・フーコー、田村 俶/訳『監獄の誕生〈新装版〉―監視と処罰―』
慎改康之/「感染」と「規律」
岡田尊司『ADHDの正体―その診断は正しいのか―』
finalvent/その症状、本当に「大人のADHD」ですか
【二宮敦人『紳士と淑女のコロシアム 「競技ダンス」へようこそ』刊行記念】
[対談]キンタロー。×二宮敦人/人生を激変させた「競技ダンス」の魔力
【追悼 志村けんさん・宍戸錠さん】
小林信彦/『決定版日本の喜劇人』最終章・改 短期集中連載(3)
小林信彦/醒めた道化師の世界 『日本の喜劇人』再録
【短篇小説】
北村 薫/はな 後篇
【私の好きな新潮文庫】
伊藤氏貴/中高生に薦めたい「裏」教科書
太宰 治『人間失格』
司馬遼太郎『梟の城』
プラトーン、森 進一/訳『饗宴』
【今月の新潮文庫】
池波正太郎『幕末遊撃隊』
新潮文庫/編『文豪ナビ 池波正太郎』
木村行伸/没後30年、ますます面白い池波正太郎
【コラム】
[とんぼの本]
とんぼの本編集室だより
[新潮新書]
山本博文『「関ヶ原」の決算書』
北本 壮/亡くなる直前まで手を入れていた本
三枝昂之・小澤 實/掌のうた
【連載】
バリー・ユアグロー 柴田元幸 訳/オヤジギャグの華 第13回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第5回
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第5回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第5回
川本三郎/荷風の昭和 第24回
編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟と写真は、村上龍さん。
◎新潮文庫の部長が寄ってきて、「谷川俊太郎さんの〈オランの夏〉って、カミュの『ペスト』から来てるよね?」。これは、あの大詩人の処女作の一つ「ネロ」の「そして今僕は自分のや又自分のでないいろいろの夏を思い出している/メゾンラフィットの夏/淀の夏/ウィリアムスバーグ橋の夏/オランの夏」という一節を指しています。
◎「ネロ」は1950年6月に完成しました。オランは5月に下巻が出たばかりの『ペスト』の都市、ウィリアムスバーグは米映画「裸の町」(公開は1948年末)で犯人を追い詰める橋、淀は作者のお母様の里で、終戦の年の夏に疎開しています。そしてメゾンラフィットは、第七部「1914年夏」(これでノーベル文学賞受賞)の翻訳(三分冊)が出始めた『チボー家の人々』の舞台――こんな具合に、あの頃の文化系男子の好みが連打されているわけですね。谷川さんは当時十八歳。当り前ですが、地名選択のセンスも字面もリズムもすごい。
◎「裸の町」を意識した黒澤明「野良犬」は1949年夏撮影。冒頭、腹這いで舌を出し炎暑を凌ぐ犬にネロを思い出します。「お前の舌/お前の眼/お前の昼寝姿が/今はっきりと僕の前によみがえる」(「ネロ」)。
◎初夏の頃が麦秋。1951年の小津安二郎「麦秋」で、原節子と亡兄の親友(二本柳寛)は「面白いですね『チボー家の人々』――」「どこまでお読みンなって?」「まだ四巻目の半分です」と話します。第四巻は第三部「美しい季節」下、ジャックが友人の妹と恋に落ちるあたり。この二人が第一次世界大戦(第七部で描かれる)のせいでできなかった結婚を、北鎌倉の二人は実現します。「ネロ」のは、一体何巻目のメゾンラフィットでしょうね。
▽次号の刊行は五月二十七日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。