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今月の表紙の筆蹟は、燃え殻さん。

波 2021年8月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2021/07/27

発売日 2021/07/27
JANコード 4910068230812
定価 100円(税込)
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【筒井康隆掌篇小説館】
筒井康隆/宵興行
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第47回
【燃え殻『これはただの夏』刊行記念特集】
はっとり(マカロニえんぴつ Vo/Gt)/「もう遅いと思うには、きっとまだ早い」
[漫画]大橋裕之/ただの夏
【畠中 恵「しゃばけ」シリーズ20周年記念】
[特別インタビュー]中村隼人/壁がなくなるまで、がんばるしかない。
千葉雅也『オーバーヒート』
佐々木 敦/○○とは誰か?

ペーター・テリン、長山さき 訳『身内のよんどころない事情により』
上田岳弘/二つの志向、その断裂

金子 薫『道化むさぼる揚羽の夢の』
鳥澤 光/幻想と現実の交わるところ

椎名 誠『漂流者は何を食べていたか』(新潮選書)
角幡唯介/経験上、狼が一番おいしいです

落合陽一『半歩先を読む思考法』
養老孟司/私の封印を解く想定外の著作

池田理代子『フランス革命の女たち〈新版〉―激動の時代を生きた11人の物語―』
中島京子/ずるさも潔さもかけがえのない人物像
【山舩晃太郎『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』刊行記念特集】
中江有里/知らない世界の扉を開く
[対談]草野 仁×山舩晃太郎/水中考古学の世界へようこそ!
【特別エッセイ】
太田和彦/ミニシアター巡礼が私を作った
【短篇小説】
北村 薫/糸 前篇
【私の好きな新潮文庫】
林家正蔵/罪つくりな新潮文庫
 宮部みゆき『初ものがたり
 ジェームズ・M・ケイン、田口俊樹 訳『郵便配達は二度ベルを鳴らす
 ビル・クロウ、村上春樹 訳『さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想―
【今月の新潮文庫】
宇能鴻一郎『姫君を喰う話―宇能鴻一郎傑作短編集―』
鵜飼哲夫/日本文学史の穴ボコを埋める
【コラム】
岸 宣仁『財務省の「ワル」』(新潮新書)
岸 宣仁/エリート中のエリートの素顔とは?

[とんぼの本]編集室だより

三枝昂之・小澤 實/掌のうた

【新連載】
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない
崎山蒼志/例えば筒を覗けば未来

【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第11回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第20回
大木 毅/指揮官たちの第二次世界大戦 将星の横顔をみる 第2回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第9回
内田 樹/カミュ論 第8回
小松 貴/にっぽん怪虫記 最終回
川本三郎/荷風の昭和 第39回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、燃え殻さん。

◎この初夏、太田和彦さんに倣ってミニシアターへ通ううちに、洒脱で人間くさい川島雄三監督作品に痺れ、DVDや配信でも観続けています。小林秀雄考えるヒント』で酷評された「貸間あり」も素晴らしい。
◎あの重喜劇、原作者の井伏鱒二にも不評、世評も散々で、監督曰く「小生としては悲鳴をあげていることが理解されなかったのは、悲しく残念です」。けれど年下の盟友小沢昭一さんは「(あれは)川島雄三の精神的自叙伝ではないか」、「僕はあのときから、批評家不信の気持ちが芽生えた」と回想し、弟子筋の今村昌平監督は「日本映画史の中でもかなり秀逸」と評し、共同脚本の藤本義一さんは『生きいそぎの記』で生々しい創作過程を描いて直木賞候補となりました。
山口瞳が川島監督と銀座で呑んでいると、映画版「えい」をめぐって大岡昇平と監督が喧嘩を始めた由。「原作は生みの親が売ったのだから女郎と一緒だ」と嘯いて遠慮なく変える監督だから、原作者との相性は悪いのでしょう。でも、最後に準備していた山口瞳原作、小沢昭一主演の「まん氏の優雅な生活」は観てみたかったなあ。
◎と、右のようなことは実は二の次、川島作品で何より惹かれたのは(「何を今更」は百も承知!)芦川いづみでした。なかんずく、「風船」で小児麻痺の少女を演じる彼女は胸をかきむしられるような可憐さ。この映画、主役の森雅之(元天才画家で役名は村上春樹)が京都で呑む店はかの「おそめ」で、さんも登場し科白をこなしています。
◎一昨年出た『芦川いづみ 愁いを含んで、ほのかに甘く』もいそいそ購入。Iアーウィン・ショー所縁ゆかりの題も構成も編者の思いが熱い、やっぱり女優の写真集はこうでなくちゃあ。
▽次号の刊行は八月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。