ホーム > 雑誌 > 雑誌詳細:波 > 雑誌詳細:波 2022年6月号

今月の表紙の筆蹟は、賀喜遥香さん。

波 2022年6月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/05/27

発売日 2022/05/27
JANコード 4910068230621
定価 100円(税込)
「波」はお近くの書店からもご注文できます。

阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第57回
【特別エッセイ】
杏/ヤマト記
【雛倉さりえ『森をひらいて』刊行記念特集】
[対談]雛倉さりえ×大前粟生/うつり変わる世界で、小説を書く

桜木紫乃『孤蝶の城』
鈴木おさむ/だからこそ彼を、彼女を応援する。

【瀬戸内寂聴生誕百年記念『瀬戸内寂聴全集』、『私解説―ペン一本で生きてきた―』刊行記念特集】
尾崎真理子/百寿でかなったこと

岸田ひろ実『人生、山あり谷あり家族あり』
しまだあや/自分にも誰かにも、優しくなれる

津村記久子『やりなおし世界文学』
辻山良雄/止まらない「本の話」

梶よう子『広重ぶるう』
縄田一男/広重の気概

【飴村 行『空を切り裂いた』刊行記念】
[インタビュー]飴村 行/地獄を再現したかった

賀喜遥香、菊地泰久 撮影『乃木坂46賀喜遥香 1st写真集 まっさら』
賀喜遥香/待望の初写真集、4種カバーを本人が解説!

黒瀬悦成『世界最強の研究大学 ジョンズ・ホプキンス』
川田晴一/人類を感染症から守る「頭脳」にして「心臓部」

【村雨辰剛『村雨辰剛と申します。』刊行記念】
[インタビュー]村雨辰剛/日本が好き、和の美が好き。

【Special対談】
三宅香帆×梨ちゃん/SNSは本への新しい扉
【短篇小説】
北村 薫/水 その3

【川端康成没後50年特別企画―単行本未収録小説―】
川端康成/妻の思い
【新潮選書ベストセレクション2022】
大木 毅『指揮官たちの第二次大戦―素顔の将帥列伝―』
[インタビュー]大木 毅/「熱なき光」を当てて描いた軍人の肖像

更科 功『ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか―生物の死 4つの仮説―』
高橋真理子/人はずーっと「なぜ死ぬのか」を考えてきた

島田雅彦『小説作法XYZ―作家になるための秘伝―』
[エッセイ]島田雅彦/創作に目覚めよ

周東美材『「未熟さ」の系譜―宝塚からジャニーズまで―』
輪島裕介/「未熟さ」と「成熟」のあいだで思案する

受賞作ベストセレクション

【私の好きな新潮文庫】
春風亭一之輔/ドキュメンタリーに心惹かれて
 代々木忠『つながる―セックスが愛に変わるために―
 石井光太『浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―
 中崎タツヤ『もたない男
【今月の新潮文庫】
彩藤アザミ『エナメル―その謎は彼女の暇つぶし―』
大矢博子/一筋縄ではいかない、異色の青春ミステリ
【コラム】
三枝昴之・小澤 實/掌のうた

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第3回

土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)
土井善晴/「一汁一菜」で幸せになって欲しい

[とんぼの本]編集室だより

【連載】
内田 樹/カミュ論 第13回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第30回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第19回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第2回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第6回
伊与原 新/翠雨の人 第6回
春画ール/春画の穴 第8回
川本三郎/荷風の昭和 第49回
第35回三島由紀夫賞・山本周五郎賞決定発表
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、賀喜遥香さん。

◎福岡で四代百年続く町医者の家を描いた帚木蓬生さんの新作『花散る里の病棟』が好評です。著者名と題に『源氏物語』の帖のタイトルが三つも入っている珍しい一冊。
◎帚木さんは東大仏文科卒業後、TBSに勤めたものの(直属の上司に久世光彦、鴨下信一両氏がいた)、九大医学部へ入り直し精神科医となります。再受験の際、卒業した高校へ模試を受けに行くのが面映ゆく、急遽拵えた偽名が「帚木蓬生」。愛読していた『源氏物語』から、「姓になるのは帚木だろう」「名は末摘花が出てくる帖から選んだ」とはかつてのインタビューでの言(大意)。
◎花散里も末摘花同様、源氏の妻の一人です。新作の題が決まった後で帚木さんが教えてくれたのはユルスナール「源氏の君の最後の恋」(『東方綺譚』所収)。紫式部が空白にした「雲隠」の帖を埋めるように、隠棲する源氏の最晩年の姿を描くもので、ヒロインが花散里。これは機智縦横かつ余情の深い好短篇でした。
◎この手の『源氏』の〈二次創作〉で逸することが出来ないのが小林信彦さん「唐獅子源氏物語」。大親分が警察の締めつけのせいで須磨へ避難し、光源氏に感情移入して……。田辺聖子さん曰く「谷崎源氏の口吻がそのままとり入れられ(略)七転八倒して笑ってしまう」快作。作者も自信作のようで、あとがきで「世に、〈与謝野源氏〉とか〈谷崎源氏〉という呼び方があるが、本書は、〈から・源氏〉と気軽に呼んで欲しい。ただし、そそっかしい人が、唐十郎氏の作品とまちがえたとしても、それは、当方の責任ではない」と余裕綽々。古典クラスタは必読! ちなみにこの短篇、〈恵方巻〉の風習(巻き寿司を無言で食べるアレ)に初めて言及した小説のような気がします(発表は1982年)。有識者はご教示下さい。
▽次号の刊行は六月二十八日です。

お知らせ

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。