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今月の表紙の筆蹟は、ミシェル・フーコーさん。

波 2021年1月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/12/28

発売日 2020/12/28
JANコード 4910068230119
定価 100円(税込)
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【筒井康隆掌篇小説館】
筒井康隆/深夜便
【加藤シゲアキ『オルタネート』刊行記念対談】
加藤シゲアキ×宇佐見りん/結局、描きたいのは「人間」でした。 司会・構成 吉田大助
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第40回
【特別企画】
ミシェル・フーコー、フレデリック・グロ 編、慎改康之 訳『性の歴史IV 肉の告白』
石田英敬/誰でも分かる、フーコー『性の歴史』

フィンセント・ファン・ゴッホ、ファン・ゴッホ美術館 編、圀府寺司 訳『ファン・ゴッホの手紙 I・II』
平松 麻/ゴッホの絵はテオに向ける言葉に守られた
山本幸久『神様には負けられない』
彩瀬まる/痛みの先へ向かう営み

アントワーヌ・ローラン、吉田洋之 訳『赤いモレスキンの女』(新潮クレスト・ブックス)
辻山良雄/まだ見ぬ女性の〈声〉に打たれた書店主は

読売新聞政治部『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』
橋本五郎/寡黙な新総理を生んだ「人間的な営み」の連鎖

武内 涼『阿修羅草紙』
高橋敏夫/若き忍者に降臨する、希望としての「共和国」

矢野 隆『とんちき 耕書堂青春譜』
細谷正充/嫉妬する天才たち

森本あんり『不寛容論―アメリカが生んだ「共存」の哲学―』(新潮選書)
宇野重規/「最低限の礼節」から出発しよう

【戌井昭人『さのよいよい』刊行記念】
[マンガ]ほしよりこ/彼女の「さのよいよい」
【柳瀬博一『国道16号線―「日本」を創った道―』刊行記念対談】
柳瀬博一×隈 研吾/「16号線エリア」の地形がすごい建築を生んできた!

【最果タヒ『夜景座生まれ』刊行記念対談】
最果タヒ×萩尾望都/詩を読む呼吸、漫画を読む呼吸

【紙木織々『それでも、あなたは回すのか』(新潮文庫nex)刊行記念対談】
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【短期集中連載】
塩野七生『小説 イタリア・ルネサンス』をめぐって(最終回)
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三島由紀夫『音楽』(新潮文庫)
南陀楼綾繁/34冊! 新潮文庫の三島由紀夫を全部読む[中編]
【私の好きな新潮文庫】
森田正光/「絶対」はない
 島崎藤村『破戒
 竹内久美子『男と女の進化論―すべては勘違いから始まった―』
 NHKスペシャル取材班『超常現象―科学者たちの挑戦―
【今月の新潮文庫】
林真理子『愉楽にて』
三浦瑠麗/性愛の果ての真実
【新潮文庫】
第8回 中高生のためのワタシの一行大賞受賞作品発表
【コラム】
[とんぼの本]
とんぼの本編集室だより

渡部恒雄『2021年以後の世界秩序―国際情勢を読む20のアングル―』(新潮新書)
渡部恒雄/トランプが開けたパンドラの箱

三枝昂之・小澤 實/掌のうた
【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第4回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第13回
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第13回
バリー・ユアグロー 柴田元幸 訳/オヤジギャグの華 最終回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第3回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第13回
川本三郎/荷風の昭和 第32回
編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、ミシェル・フーコーさん。

◎2020年で最も刺激的だった朗読は九月二十八日深夜にラジオで聴いた伊集院光さんのカフカ「お父さんは心配なんだよ」。これはボルヘスや澁澤龍彦偏愛の掌篇小説文庫本で二ページで、今迄「家長の心配」等と訳されてきたのを多和田葉子さんが新訳したもの(集英社文庫『ポケットマスターピース01 カフカ』所収)。
◎そいつは平たい星形の糸巻きみたいな形をしている。中央から棒が垂直に出ており、そこからまた直角に棒が出、その棒と星のぎざぎざを脚にして立つ。「君、名前は?」「オドラデク」「どこに住んでいるの?」「住所不定」と答えて笑う。屋根裏部屋や階段の踊り場、廊下など次々居場所を変え、姿の見えない時期もある。「死ぬ者は死ぬ前には目的とか、活動みたいなものがあるはずだが」、こいつには当てはまらない。やがて私の子や孫の足下で転がっていくのだろうか。「私の死後もこいつは生き続けるんだと思うとそれだけでなんだか心が痛む」。
◎伊集院さんがカフカの語り口をリスナーのネタ葉書と詳細に比較したのも興味津々。けれど何より感動的なのは、末尾でふいに現れる〈悠久の時間に生きる哀しみ〉でした。
宮沢賢治のクラムボン、内田百閒くだんや名無しの獣、安部公房のユープケッチャなど、本邦でも奇妙な生物が登場する佳什は多く、筒井康隆さんの『虚航船団』もそう。
◎終幕、文房具達と鼬族の殺戮戦の果てに、コンパスとクズリの間に生まれた「頭部を金属的に光らせた異形の息子」は、将来を心配する母鼬に向って……彼が何と言ったかは原文に当ってください。長く血腥い歴史の中で生きていく哀しみだけではない、大きな感情が広がって胸を打ちます。災厄と不寛容の時代に読むのが相応しい長篇小説。
▽次号の刊行は一月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。