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今月の表紙の筆蹟は、山下洋輔さん。

波 2022年9月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/08/29

発売日 2022/08/29
JANコード 4910068230928
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第60回
【特別エッセイ】
山下洋輔/記憶とは不思議なものだ 半世紀ぶりの「再乱入ライブ」
【特集 新潮クレスト・ブックス フェア】
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佐々木 譲/伝統の灯台奇譚に新しい解決

ローベルト・ゼーターラー、浅井晶子 訳『野原』
[インタビュー]ローベルト・ゼーターラー/ハンザー出版からゼーターラーへの5つの質問 新作『野原』をめぐって

ただいま翻訳中!
万城目 学『あの子とQ』
吉田大助/ホワットダニットの物語としても読める大傑作

乃南アサ『家裁調査官・庵原かのん』
池上冬樹/海外ドラマ的であり人生讃歌でもある

新潮社 編『「十二国記」30周年記念ガイドブック』
朝宮運河/唯一無二の作品世界をひもとく初の公式ガイドブック

二宮敦人『ぼくらは人間修行中―はんぶん人間、はんぶんおさる。―』
[漫画書評]土岐蔦子/不完全な親はあなただけではない

岡本隆司『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)
阿南友亮/「悪党」たちへのレクイエム

笠谷和比古『論争 関ヶ原合戦』(新潮選書)
小和田哲男/松尾山の小早川秀秋陣所で問い鉄砲は聞こえたか?

【荻堂 顕『ループ・オブ・ザ・コード』刊行記念特集】
瀧井朝世/〈抹消〉された国家の未来とは
北上次郎/細部とアフォリズムの魅力
【早見和真『あの夏の正解』文庫化記念】
[対談]早見和真×内山壮真(東京ヤクルトスワローズ)/甲子園中止から2年目の夏

【特別寄稿】
[回想記]風間 研/向田邦子さんと父・風間完

【特別企画】
南陀楼綾繁/45冊! 新潮文庫の松本清張を全部読む 長編小説編
【私の好きな新潮文庫】
枝元なほみ/本の森に分け入る
 ヒュー・ロフティング、福岡伸一 訳『ドリトル先生航海記
 長塚 節『
 ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
【今月の新潮文庫】
ポール・ベンジャミン、田口俊樹 訳『スクイズ・プレー』
吉野 仁/ポール・オースター幻のデビュー作の面白さ

【コラム】
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第6回

読売新聞社会部「あれから」取材班『人生はそれでも続く』(新潮新書)
木下敦子/ニュースになった「あの人」は今、どう生きているか

[とんぼの本]編集室だより

三枝昴之・小澤 實/掌のうた
【新連載】
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記
【連載】
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第33回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第22回
伊与原 新/翠雨の人 第9回
春画ール/春画の穴 第11回
川本三郎/荷風の昭和 第52回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、山下洋輔さん。

蓮實重彦さんの『ジョン・フォード論』刊行に合わせたフォード特集がシネマヴェーラ渋谷で絶賛上映中(九月十日から第二期開始)。「捜索者」に拍手が湧き、「戦争と母性」では歔欷すすりなきが聴こえました。
◎「プリースト判事」は南北戦争終結から四半世紀後のケンタッキーに南軍の代表曲「デキシー」が鳴り響く中、町中の人々が行進パレードして終わります。これを自らリメイクしたのが「太陽は光り輝く」。この映画はフォードお気に入りの自作ですが、冒頭近く、法廷で判事(元南軍)が黒人青年にバンジョーを弾かせると、始めたのが北軍の「ジョージア行進曲」。周囲が慌てて止め、改めてデキシーを弾かせます。映画館の暗闇で僕が「何でここにあの歌が!」と飛び上ったのは、この行進曲が「東京節(パイノパイノパイ)」の原曲と知らなかったせい。エノケン、森山加代子、植木等、ドリフ、最近は奥田民生も唄ったアレです。
◎その後DVDで観たM・カーティス監督の「無法者の群」にも、酒場でジョージア行進曲に盛り上がる一団へ対抗してデキシーを唄い返す場面がありました。こうなると、後年の同監督作「カサブランカ」の「ラインの護り(ドイツの愛国歌)」を「ラ・マルセイエーズ(フランス国歌)」でかき消す有名な場面は、ジョージア行進曲対デキシーの同工異曲だと分ってきます。
◎あの行進曲、日本では救世軍が広め、次いで軍歌「ますらたけを」となり、大正期に添田知道の詞で東京節に変って人気を博した由。添田の著作から題を貰った大島渚監督「日本春歌考」は、軍歌対軍歌ではなく、軍歌(あるいは国家)と春歌を対立させて今観ても挑発的です。でも軍歌を〽ラメチャンタラギッチョンチョンデパイノパイノパイ パリコトパナナデフライフライフライとするのだってやっぱり凄いですよね。
▽次号の刊行は九月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。