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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

新潮新書も100冊

 2003年4月の創刊から1年9カ月。おかげさまで、新潮新書も今月の新刊で100点を超えました。
 毎月出し続けていれば、いつかは100点、200点となるわけで、100という数字は通過点に過ぎないのですが、それでも編集部にとっては感慨ひとしおです。
 数カ月前に「1月で100を超えるんだなあ」と気がついたとき、思わず嬉しくなり、編集部内で「『新潮文庫の100冊』をもじって、『新潮新書も100冊』なんてポスター作ったらどうだろう」「じゃあ、ヨンダパンダじゃなくて、ヨンデパンダってどうですか」などと盛り上がっていたのですが、まあ冷静に考えると、しょせんは編集者の自己満足に過ぎませんので、そういう恥ずかしいことはやめました(でも少しくらいは宣伝したかったので、毎日新聞と産経新聞に出したお正月広告には100という数字を出してあります。新聞のテレビ欄をパロディにした遊び心のある広告で、おかげさまで好評でした)。

 点数が増えていくと、喜びの一方で、悩ましいことも出てきます。例えば、1冊1冊の中に挟んである折り込みチラシ。これまでは「好評既刊」という形ですべての書目を紹介できましたが、スペースには限りがありますので、増えていけば当然ながら全部は載せられなくなります。どの本にも愛着があるのに、涙をのんで選んでいかなければなりません。
 その意味では、ホームページというのはありがたい存在です。既刊案内のところをクリックしていただければ、すべての既刊を眺めることができます。新刊時に気がつかなかったり、買いそびれて忘れたままというケースも多いはず。既刊本の中にもいろいろ面白いものが揃っていますので、ぜひチェックしてみてください。
 ただの一覧はわかりにくいので、最近はチラシの既刊紹介は大まかなジャンル分けをしてあります。もちろん分類なんていうのは、あくまで便宜的なものですが、多少の目安としてお役に立てるのではないでしょうか。
 この場を借りて、そのジャンル分けに沿って、ほんの一部ですが昨年刊行した中からいくつか紹介いたしますと――。
〈人生を考える〉
 NHKの某会長の去就が注目されていますが、とかく引き際というのは難しいもの。『男の引き際』(黒井克行著)は、見事な引き際を飾った人々の実例をひもときながら、引退の美学を考えます。『妻に捧げた1778話』(眉村卓著)は、末期ガンに冒された妻をみとった作家ならではの記録。心を打つ愛妻物語として話題になりました。
〈歴史を知る〉
日露戦争―もうひとつの「物語」―』(長山靖生著)は日露戦争を「メディアによる消費」という観点からとらえなおした力作。今年9月はポーツマス講和から100年です。仏教が見直される昨今、奈良時代の仏教思想の中に「資本主義の精神」を見いだした『仏教と資本主義』(長部日出雄著)にもご注目を。日本という文明の基層が見えてきます。
〈世界がわかる〉
 ブッシュの二期目が始まりましたが、メディア時代の「アメリカ大統領」の意味を考える上で『中傷と陰謀―アメリカ大統領選狂騒史─』(有馬哲夫著)は示唆に富む1冊。混迷を深めるイラク情勢ですが、『中東 迷走の百年史』(宮田律著)は直近の歴史を俯瞰した中東入門。ニュースの背景が整理できます。
〈日本を読む〉
 青色発光ダイオードの裁判でもわかるように、知財はこれからの大テーマ。『知財戦争』(三宅伸吾著)はその最前線をレポートした最適の知財入門です。日本社会はまもなく団塊世代の大量定年時代を迎えますが、『団塊老人』(三田誠広著)は同世代の芥川賞作家が、直面する課題と新しい生き方を提案します。
〈目からウロコ〉
  『「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史─』(多賀敏行著)は、「ウサギ小屋」など歴史上の有名な言葉の出典をひもときつつ、こうした言葉を日本人が自虐的に誤解してきたことを明らかにします。『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』(黒川伊保子著)は、音が脳に働きかける作用を解読した異色の書。昨秋テレビ番組でも紹介され、大きな反響がありました。
〈文化を愉しむ〉
  『世界中の言語を楽しく学ぶ』(井上孝夫著)は、100以上の外国語を学んだ達人が趣味としての多言語学習の魅力を語ります。短歌を学びたい方には俵万智氏による『考える短歌─作る手ほどき、読む技術─』、川柳を楽しみたい方には小沢昭一氏による『川柳うきよ鏡』をどうぞ。人気ラジオ番組の舞台裏を明かした『眠れぬ夜のラジオ深夜便』(宇田川清江著)も楽しめる1冊。
〈生活に役立つ〉
  『40歳からの仕事術』(山本真司著)『人事異動』(徳岡晃一郎著)は、仕事の壁に悩むビジネスマンが思わずヒザを打つ指南書。歯に悩む方には『さらば歯周病』(河田克之著)が、アレルギー体質に悩む方には『今すぐできる体質改善の新常識』(小山内博・高木亜由子著)がオススメです。自分の整理ベタに悩む向きには『「挫折しない整理」の極意』(松岡英輔著)はまさに光明の書です。

 ご紹介したい本は、ほんとはまだまだあります。この機会にぜひ書店の新潮新書のコーナーを改めて眺めてみてください。1月刊までの書目を収めた解説目録も書店に置いてあります。解説目録は3カ月に一度のペースで更新していく予定です。
 本年も魅力的な本を続々と刊行していきますので、ご愛読のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

2005/01