
「鉄道紀行の醍醐味」
ゆく列車の流れは絶えずして、しかももとの列車にあらず、春には春の、秋には秋の鉄道の旅がある。開業以来百十数年の春秋を数え、線路を走る列車から幾千の物語が紡ぎ出され、時代時代の鉄道紀行が生み出されてきた。
国会図書館のデジタルアーカイブに分け入れば、内田百閒以前にも名著がズラリと並んでいることを知る。弊社書棚にも宮脇俊三先生はじめ鉄道名著が並ぶ。
列車は変われど、線路は明治以来同じ所を走り、車窓視線は先人と同じ、ただし風景は変わる。鉄道紀行の楽しみはまさにここあり。鉄道車窓とスピードの変化はそのまま日本の近代の変化そのものだ。古きを知り、我が目で新しきを知る。鉄道紀行の醍醐味である。