
美術書や教科書で触れられることはほとんどないが、美術の歴史には「美少年画」というジャンルがある。そこで美術史家の池上英洋氏による解説のもと、「芸術新潮」2017年1月号では、古代ギリシャから現代まで、2500年に及ぶ美少年西洋美術史を追いかけた。美少年たちは、時代のあらゆる要因を吸収して変容していく。
美少年が登場する美術や文学から浮かび上がってくる、それが故の特別なテーマ。作家たちは美少年を描くことで、何を表現しようとしているのだろうか。
死に魅惑されて没落する芸術家の悲劇
少年の姿は、大昔の、ものの根源と神々の誕生とについて物語る詩人の言葉のようであった。
(本書より)
神話や時代背景を読み解き、読者を知的絶頂(エクスタシー)へと誘(いざな)う
第六章 涙の美少年ヌード
[本書 目次より →目次へ]
革命の少年兵が全裸で描かれた理由
人は自身の心身をうるおし癒してくれるものに「美」を感じるようにできている。
[本書より →立ち読みへ]
“ドリアンと話をするのは、精妙なヴァイオリンを弾くのに似ている。弓のひと触れ、ひと震えに敏感に応(こた)えてくるからだ。”
あの少年にたいしてなしえぬことはひとつもない。タイタンのごとき巨人にも、かわいらしい玩具にも、つくりあげることができるのだ。これほど美しいものが色褪せる運命にあるとはまったく残念なことだ!
(本書より)
少女マンガの常識を打ち破った不朽の名作「風と木の詩(うた)」
ジルベールって、絵に描こうとするとちゃんと現われてくれない不思議なキャラクターなんです。気まぐれで危うさを持つ少年ですし、いつも同じ顔は見せてくれません。
[竹宮惠子/伝えたいことが強いほど描くことに熱心になれる より →全文へ]
二つの最も人間的な欲求である知と愛とが、反撥し合いながら互いに引かれ合う姿を描いた多彩な恋愛変奏曲
彼はこのきれいな明るい愛らしい少年を友だちにしたいと願った。この少年が自分の反対の極であると同時に、自分の補足であることを、ほのかに感じた。
(本書より)