下北交通に乗車したのは、平成3年のゴールデンウィークでした。この時が最初で最後の乗車となりました。終点の大畑からバスに乗り、大間を回って、佐井まで行きました。大畑から下風呂付近までは大畑線の未成線の建造物もあり、天気も良く、津軽海峡を横目にローカルバスの旅を楽しみました。
未成線の建造物はいつかじっくり見てみたいものだと思っていましたが、それが実現したのは、今年5月でした。海沿いの橋脚やアーチ橋を眺めてきました。「いつか」とか思っていると、簡単に20年が過ぎてしまうんだなと妙な感慨がありました。
5月に下北交通廃線跡、大湊線などを訪れたのは、駅舎の撮影が目的でした。もちろん下北交通は廃線ですので、現役駅舎を撮影できませんでした。Webの駅ページには、RGG様からお借りした現役時代の駅舎写真を掲載しています(川代以外)。いずれも昭和60年6月29日の撮影です。大畑線の転換は7月1日でした。
正津川駅の姿がとてもいいので、じっくり見てしまいました。張り出した玄関屋根の両サイドに壁があります。もちろん雪国ですから、玄関前の雪除けとしては必要なのでしょうけど、この形は珍しいのではないかと思いました。北海道でも見かけない玄関です。
▲左:正津川 右:陸奥関根
2つ隣の陸奥関根も同様の造りです。実はRGG様からお借りした別カットを見ると、樺山も川代も正面はこの形でした。大畑線独特なのか、他の線、たとえば大湊線にもこの形の駅が存在したのか。興味は尽きません。この様式には名前があるのでしょうか。駅舎の専門家で『百駅停車』の筆者でもある杉﨑行恭さんに聞いてみましょう。▲左:樺山 右:川代 撮影(4点):RGG
ちなみに瀬棚線の茶屋川もこの形の駅舎でした。駅舎に比べて、玄関屋根が大きく、それだけ目立ちます。この5駅、いずれも廃線なのが惜しまれます。
追伸 今朝のTBSラジオでは、廃線跡歩きの話をしました。取り上げたのは、羽村軽便軌道、北陸本線旧線、大分交通耶馬溪線です。廃線歩きに不向きな季節になってしまいましたが。
編集部 田中比呂之(ひろし)