だいぶ以前に神保町の古書店で手に入れたものの、ほとんど見ることもなく自宅の壁に立てかけておいたのが、『日本の駅』(鉄道ジャーナル社)です。これが今やページをめくらない日はないほど、愛読する本になっています。毎日新しい発見があります。編集に携わる者として、こういう本を作ってみたい、と思わせる本です。昭和47年10月14日発行、つまり鉄道100周年を記念して刊行された写真集ということです。
副題には「写真で見る国鉄駅舎のすべて」とあります。当時現存した国鉄の駅舎すべてがここに乗っているということでしょう。もっとも注意書きには、民間委託駅と無人駅は載っていないと書いてあります。ですから例えば私の自宅近くの「国鉄」駅菊名は載っていないのです。この駅は長らく東急の委託駅でした。
値段は5000円です。40年前の値段です。東京都区内発の北海道周遊券は学割で6180円でした。営業的に大丈夫だったのだろうかと思いますが、巻末の駅長名一覧に販売戦略の一端が見えるような気がします。
さてこの駅舎の写真集は、ただ駅舎の写真が並んでいるだけではありません。駅にアンケート調査をしたのでしょう、今となっては貴重なデータが簡潔に示されています。
①駅の設置年月日
②駅舎の改築年月日
③接続鉄道線名
④職場の標語・モットー
⑤付近の名所旧跡など
⑥特殊弁当
⑦その他の特記事項
このデータがすべての駅に付されているのです。②の改築は、立て替えということだそうです。この徹底した編集姿勢が40年の時を経ても、私のような「遅れてきた」読者も引き込む力を生んでいるのだと思います。
現在の駅とここに出ている駅舎を見比べると、改造しながら元の駅をつかっているとかがわかります。前にこのブログでご紹介した新旭川駅は、②の欄に「不明」とあります。しかし開業当初の駅舎と見比べると、同じ駅舎だということがわかりました。やはりこのブログで「似たもの駅舎」としてご紹介した千歳線の植苗と美々の写真を見ると、改築前も「似たもの駅舎」だったことがわかり、ますます深みに嵌まっていきます。
勝手に複写できないのでご紹介できないのは残念ですが、いずれ許可をいただいてご紹介したいと思います。
編集部 田中比呂之(ひろし)