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想像を掻き立てる「虎」と「杖」

 室蘭本線虎杖浜という駅があります。長万部方面から来ても、札幌方面から来ても、そろそろ退屈してくるあたりでしょうか。虎、杖、浜の組み合わせは、想像を掻き立てる漢字です。しかも私は長い間、「浜」ではなく「兵」だと思い込んでいました。
「浜辺に倒れていたアイヌの兵士に、通りかかった虎が杖を貸した伝説から、これが地名となり、駅名もこれによった」などという解説があったら信じてしまいそうですが、これは私の創作です。

 「KINU」さんから虎杖浜駅の写真をご投稿いただいたのを機会に、思い込みを正しておこう思います。
 このブログでしばしば参考にしている国鉄北海道総局編『駅名の起源』によれば、アイヌ語の「クッタラ・ウシ」が語源で、イタドリの多いところ、という意味だそうです。しかし、イタドリ、といわれても姿が浮かびません。先輩の労作『新潮日本語漢字辞典』から引用します。

 「①多年草の名。日当たりの良い山野に自生する。若芽と茎は食用で酸味があり、塩漬けにして保存用にしたりする。また、根と地下茎は漢方薬や染料にも使う。◇「こじょう」とも読む。」

 イタドリ=虎杖。知りませんでした。「こじょう」とも読む。なるほど。クッタラ→イタドリ→虎杖→こじょう、と変遷して、虎杖浜が誕生したようです。昭和3年の開業以来、駅名は変わっていません。
 駅名は変わっていませんが、駅舎は変わっています。6月14日のブログで紹介しました『日本の駅』(昭和47年刊、鉄道ジャーナル社)の写真を見ると、木造の駅舎の写真があります。平成5年刊『北海道630駅』(小学館)には現在の駅舎が写っています。駅解説には、「こじょうはま」と呼ぶのには抵抗がある、と解説らしからぬ感想まで書かれています。
uenae.jpgbibi.jpgkojyouhama.jpg左上が植苗、右上が美々、中央が虎杖浜 (上2点)撮影:杉﨑行恭氏、(中央)投稿:KINUさん(クリックするとポップアップします)
「KINU」さんご指摘の通り、美々植苗と同形の駅舎ですね。北海道にはまだこの形の駅舎がどこかに潜んでいるかもしれません。

「KINU」さん、ようこそ。今後のご投稿、楽しみにしています。「小心火車」さん、寅年用の写真は、この駅ではありませんか?

 編集部 田中比呂之(ひろし

2013年06月28日   北海道   タグ : 似たもの駅舎, 千歳線, 室蘭本線, 駅舎の話

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