ホーム > Web日本鉄道旅行地図帳 BLOG 悠悠自鉄 > 関東 > 夏休みの読書感想文に『関東大震災と鉄道』を
夏休みの読書感想文に『関東大震災と鉄道』を

 小中高生は夏休みですね。夏休みといえば、宿題です。夏休みの宿題。あまり良い思い出はありませんが、大人になってから、茶飲み話で夏休みの宿題を話題にすることがしばしばあります。いつの頃からか、夏休みの宿題は、性格判断になるのではないかと思い始めたからです。

 試しに「夏休みの宿題をいつやったか」を会社の同僚に聞いてみてください。おおよそ次の2つに分かれます。①7月中に片付けてしまう。②8月31日に泣きながらやる。①のタイプはひょっとして仕事が早くないですか? 大人になってもこういう性格は変わらないようです。私は②のタイプです。

 332561.jpg前置きが長くなりましたが、夏休みの読書感想文に私が担当した 『関東大震災と鉄道』を、中高生の鉄道ファンに是非よんで欲しいと思っています。この本には、鉄道を通して「震災と人間」の関わり、ドラマがぎっしり詰まっています。また大正時代の鉄道がどういうふうに運営されていたのかといったことも自然に理解できるようにもなっています。
 例えば、震災後、各機関区では水の確保が最重要課題になります。井戸の調査が行われたり、鉄橋の上から水をポンプで吸い上げようと試みたり。これは被災した鉄道員のために生活用の水を確保しようとしたのではと思いました。ところがそうではなく、蒸気機関車を走らせるための水だったのです。蛇口をひねれば水が出る時代に育った私には、すぐには理解できませんでした。
 年表上の事項だけが歴史ではないことが分かってきます。
 東海道線根府川駅に停車中の列車が、地震で発生した土石流で相模湾に転落して、多数の死傷者を出しました。この列車の被害は関東大震災の被害の中でも有名で、海岸近くに横たわる写真もあります。ただし、被害の状況や死傷者の数を伝えただけでは、震災の姿を伝えたことになりません。
 この列車に乗っていた人たちは、どうしたのでしょうか。自分にも個人史があるように、この列車に乗っていた人たちにもそれぞれの人生があり、ある人は生き残り、ある人は人生を断たれました。
  『関東大震災と鉄道』では筆者の内田宗治さんが、基本的なデータを押さえながら、震災に巻き込まれた人々の姿を浮かび上がらせています。鉄道の歴史と人間のドラマを描いたノンフィクション作品は多くはありません。
 中高生の鉄道ファンの皆さん、夏休みの鉄道旅行の際には、是非この本を持って出かけてください。今年9月1日は、大正12年の大震災から90年になります。

 編集部 田中比呂之(ひろし)

大量の写真と地図で見せる ビジュアルブック 『関東大震災と鉄道』for iPad もご覧ください。

2013年07月26日   関東   タグ : 読書感想文, 関東大震災

PAGE TOP