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御殿場線ものがたり

 御殿場線は東海道本線の国府津と沼津を結ぶ単線のローカル線です。昭和9年、丹那トンネルが開通するまでは、東海道本線でした。優等列車が行き交う栄光の時代があったことを伝える良書があります。takusan-hushigi.jpg月刊「たくさんのふしぎ」通巻12号「御殿場線ものがたり」(1986年3月1日発行/発行所福音館書店)。子供向きの本ですが、絵は黒岩保美、文は宮脇俊三。最強の子供向け書籍です。

 10年ぐらい前だったか、地元の古本屋の親父に勧められて買いました。絵本にはそれほど興味はないのですが、黒岩さんの絵に、宮脇さんの文章がついているのです。古本屋の親父の言い値で買ってしまいました。
 冒頭の見開きは、中央に富士山、左に100系新幹線、その下を走る115系電車が描かれています。

(前略)左に相模灘、右前方に箱根の山々が見えてきます。そのとき、いそいで窓の下を見ると、新幹線をくぐりぬける線路が見えます。ごくふつうの線路ですが、これが、日本の鉄道の歴史をかたるうえで、わすれてはならない「御殿場線」の今日のすがたなのです。

 山岳地帯で鉄道を運営することが、いかに大変だったか、あるいは鉄道員がいかに懸命に働いていたかが絵と文章で語られていきます。描かれている車両も、冒頭の115系からC51、D50、キハ17、EF53などバラエティがあって楽しい。
 そんな絵本の中に、ちゃんと災害のことも語られています。子供向きとはいえ、こういうところが大切です。さすが宮脇さんです。

 せまい谷にそって走る鉄道の大敵は、雨です。大雨がふるたびに、がけくずれがおこり、線路をうずめたり、おし流したりするからです。山の斜面をけずって、むりやり線路をしいたために、くずれやすくなっているからでもありましょう。山北と御殿場のあいだは、そうしたさいがいになやまされつづけた区間でした。

 kantoudaishinsai-tetsudou.jpg山北と御殿場の間は、現在でも谷間を縫うように走っています。この区間は関東大震災でも、トンネルが崩れたり、橋が落ちたり、崖崩れで線路が埋まったりと大変な被害となりました。関東大震災が発生した9月1日が近づいてきました。昨年 『関東大震災と鉄道』(小社刊)を書かれた内田宗治さんと、御殿場線でも被害が大きかった山北〜御殿場間を見てきました。
 今年は関東大震災から90年。内田さんの新たな取材レポートも含め、このブログで関東大震災と鉄道災害についてお伝えする予定です。

編集部 田中比呂之(ひろし)

2013年08月14日   関東   タグ : 御殿場線.関東大震災

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