BRTに関する新聞記事やJRのリリースには、「仮復旧」という言葉がどこかに使われているようです。「仮復旧」という言葉を目にすると、鉄道ファンである私はホッとします。あくまでもバスは「仮」の姿で、いつの日か線路が敷かれ、以前よりも快適な鉄道車両が走ることが前提になっていることを信じたい......。
▲(左)08年3社撮影会 投稿:df200-7atさん(右)BRT化工事中のJR盛駅
▲(左)「BRT盛」と印字された切符
(右)三陸鉄道南リアス線復旧1番列車折り返し
とはいえ、疑心暗鬼になっていることも確かです。今年4月3日、三陸鉄道南リアス線の盛~吉浜間が復旧して列車が走り始めました。新しい車両も導入されました。取材で盛を訪れると、写真のようにJRの線路はアスファルトの道路に変わっていました。とてもしっかりした仕事をしています。
そういえば東京都区内からの切符には「BRT盛」と印刷されていまいした。実際、大船渡線気仙沼からBRTに盛まで乗ってきました。この時は全線一般道でした。
その後着々と専用道の整備が進み、9月28日には盛~小友間が元線路を使用した専用道となったそうです。その様子はWebにもご投稿いただいた写真で知っていました。そうした写真を見ているうちと、だんだん不安になってきます。これは「仮」ではないのではないか。もし鉄道に戻すとして、ホームなどは再活用できないのではないかと、たとえば細浦駅などの写真を見ると不安を掻き立てられます。BRT化全駅の様子を見てみたい衝動に駆られます。
▲(左)大船渡線小友付近を走る盛発陸前矢作行きBRTバス
(右)大船渡線大船渡付近 投稿:df200-7atさん(左右共に)
▲(左)BRT化された大船渡線細浦駅。左バス停奥に旧ホームが見える 投稿:df200-7atさん(右)震災直後の細浦駅
先日「kusamachi」さんがご投稿された気仙沼線不動の沢駅の写真を見て、「ほら、やっぱり本気なんだ」と思いました。この写真を見ると、「仮」ではありませんね。不動の沢駅は内陸にあって、津波の被害を受けていません。無傷の駅です。無傷の駅もこうしてBRT 化でホームその他駅施設を撤去して、BRT駅にしています。
▲(左)BRT駅化された不動の沢駅 投稿:kusamachiさん
(右)震災直後の不動の沢駅
▲陸前階上駅は駅舎を改装し、ホームを残したままBRT駅を気仙沼寄りに設置
私が勝手に思い込んでいたとも言えますが、昨年BRT化された陸前階上駅を見たとき、ホームや跨線橋を残したまま、BRT駅を設置していました。駅舎もそのまま。その姿はあくまで「仮」の姿でした。なのでこうやって鉄道復旧の日を待つのだろうと疑いもしなかったのです。
津波被害で残念ながら壊滅した大船渡や小友がBRT駅に姿を変えるのは、仮の姿として仕方がないでしょう。しかし無傷の駅が更地化されて、BRT駅に整備されるのは、「約束が違う」感があるわけです。
三陸鉄道に挟まれた山田線がいまだに方針が決まらずにいるのは、沿線の人々が大船渡線や気仙沼線の様子を見て不安になっているのではと邪推までしてしまいます。新聞記事やJRのリリースから「仮復旧」という言葉が、いつの間にか消えている、などということがないように願ってやみません。
追伸 草町義和さんが書かれた気仙沼線BRTレポートはこちらをご覧ください。
編集部 田中比呂之(ひろし)