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戦前の『旅』に駅印ブームを発見!

 先日、かねてから親しくさせていただいてる大蒐集家の家を訪問してきました。国内外の主に戦前の駅ポスターを蒐集してらっしゃるのですが、ポスター以外にも実物や沿線案内、絵葉書、切符などいわゆる紙モノなども大量にあり、何度目かの訪問となった先日もついに全容はわからないままでした。こういう方にこそ、当Webをカタログとして使っていただきたいと思い、お薦めもしてまいりました。

 雑談をしていて戦前の『旅』(日本旅行協会発行)に話が及び、本棚からかなり状態のよい『旅』が何冊も出てきたのには呆れました、いや驚きました。それで前々から気になっていた駅スタンプのことが出ていないかと探してみると、ありました。
 昭和7年の号がまとまってあったので、捲っていくと郵便局の風景印とともに駅印として紹介されています。しかも号を追うごとに紹介数が増えていきます。どうもこの頃に駅スタンプの大ブームがあったようです。「ようです」と書いたのは、まだ調べが進んでいないので、詳しくはまたご報告したいと思います。
 昭和7年3月号の「旅のことづて」という巻頭言をちょっと長くなりますが、引用してみます。筆者は編集兼発行人の千葉豊という人です。タイトルは「駅の記念スタンプ」です。

----旅が趣味化されて、単に各地を遍歴したと云ふだけでは満足が出来なくなり、其の遍歴した土地から何か印象を得たいと云うことから、最初は絵葉書の蒐集が流行し始めそれから、辨当のレッテル、駅売品の包装紙、等のコレクションとなり、だんだん進んで、各地で旅客誘致のため発行する宣伝用の案内記類を集めることが趣味を喚起するようになった。それからいろいろの蒐集に苦心する人々に依って昔信仰の一種として流行し一時忘れられて居た神社仏閣の印を押捺して貰う集印帳なるものが再び世に出て多くの旅する人が集印帳を携帯するようになった、......

 このあと最初のスタンプ設置駅として福井駅のことに触れて、「今では十箇所位あると思う」と書いています。同じ号の別のページには「駅印漸次弘まる」という短い記事があります。また引用します。

----前号に紹介した、明石、静岡の両駅と前後して、駅印の使用を開始した駅は、東海道線の大津、大阪、宮津線の宮津及び天橋立の四駅である。

 さらに「▲駅長各位にお願」として

----一般読者の要望により、各駅で御使用の駅印を、本誌上に発表してゆき度いと思いますから、未発表のものは、御報知下さるよう願上げます。

 このページには大津、大阪、宮津、天橋立のスタンプの絵柄が紹介されています。ここで駅に「御報知」をお願いしたことが、以後号を追うごとに紹介スタンプ数が増えていくきっかけとなったのでしょう。前述のようにまだ調査が進んでいませんので、これぐらいにとどめておきます。
 と書きながら、もうちょっとスタンプに触れます。先日「日光牛車鉄道」さんがご投稿された武蔵中央電鉄の2つのスタンプ。高尾駅と御陵前駅。このふたつのスタンプが昭和8年11月号に紹介されています。しかも絵柄の解説、使用開始日、印色、考案者名が記されています。御陵前駅のスタンプについて「輪郭は社線と省線の連帯を表せしもの」と解説されています。『旅』は一色刷りですから色はわかりませんので、ここにご投稿のスタンプととも紹介します。
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▲投稿:日光牛車鉄道さん(上段)「旅」昭和8年11月号より(下段)

編集部 田中比呂之(ひろし) 

2013年12月10日   関東

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