昨年、当Webでミステリー小説の表紙写真を公募しました。その本が今月刊行されました。公募の際は、作家のお名前を伏せておりましたが、おそらく皆様お察しのように、西村京太郎さんの著書でした。
陸羽東線の冬の写真というのは、とんでもなく高いハードルでした。陸羽東線には鳴子温泉~中山平温泉間の超有名撮影地が知られているものの、普段はあまり注目されない路線ではなかと思います。
しかも今回の「お題」は冬景色た。これまでも編集部では西村ミステリーの表紙写真の撮影に協力しておりましたが、陸羽東線の冬景色には頭を抱えました。そうした経緯もあり、Web上での公募となりました。
採用させていただきましたのは、岩手県にお住まいの高橋弘喜さんの写真です。しっかりとした構図の写真を何枚もWebにアップしていただきましたが、弊社装幀部担当者が選んだ写真は、キハ100が雪でほとんど見えない写真でした。「生死の分水嶺」のイメージにぴったり、ということですね。編集部で撮影したらこうはいかなかったでしょう。やはり勝手知った人が撮影するのが一番です。
社内の撮り鉄2人は、この写真を見て「車両にピンがきていますね」と私とはまったく違ったところを見ていました。雪が舞っていると、手前の雪にピントが合ってしまうことがしばしばあります。私はたいして気にしませんが、撮り鉄はそうではないようです。
高橋さんに伺うと、連写ではなく、撮影した日は風雪が強くてオートフォーカスが役に立たず、マニュアルフォーカスで「1点勝負」だったそうです。キハ100撮影にそこまでするかという声が聞こえてきそうですが、こういう心構えの積み重ねはとても重要です。
表紙にはこのようなエピソードがあります。西村ファンの方はもうお買い求めいただいているかと思いますが、まだの方は是非ご一読ください。
先ほど高橋さんから写真をお送りいただきました。舞台となっている陸羽東線を走る列車のなかで、『生死の分水嶺・陸羽東線』の書影を撮影したものです。今日はお天気も良いようで。
▲撮影:高橋弘喜氏
編集部 田中比呂之(ひろし)