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北朝鮮の鉄道はどうなっているのか

20140206_01.jpg 最近、新潮新書『ハダカの北朝鮮』という本を読みました。著者は呉小元という人ですが、これは仮名です。脱北者で現在は韓国にお住まいだそうです。もともとは日本に住み、北朝鮮への帰国事業によって10代で帰国、朝鮮労働党傘下の貿易会社で働いたのち、韓国に対する工作活動中に亡命した、と著者紹介にあります。

 政治経済からスポーツ、芸能、死生観、歴史などが短い章の中でテンポ良く語られていきます。1966年サッカーW杯イングランド大会でベスト8に進んだ北朝鮮チームのメンバーは帰国当初は英雄扱いだったのに、やがて政治闘争に巻き込まれ「準々決勝で逆転負けしたのは、金日成首相(当時)に対する忠誠心に問題がある」とされて強制労働につくはめになったそうです。ポルトガルに3対0から逆転負けしたのですが、50年前にワールドカップでベスト8は世界のスポーツ史上でも大快挙でしょう。こんなエピソードが次々に出てくるのです。
 もうひとつ驚いた記述をご紹介します。「正恩氏が自身の体制が固まったと早合点し、金総書記の義弟の張成沢氏らを早期に排除しようとするかもしれない」。この本の刊行は昨年(平成25年2月)です。1年も経たずに現実になりました。
 長々と鉄道と関係のないことを書いてしまいましたが、元々北朝鮮関連の本はかなり読んでいます。きっかけは平成15年に刊行した『将軍様の鉄道』(小社刊)でした。この本はほとんど知られていなかった北朝鮮の鉄道についてまとめた本です。
 この本の企画について相談されたとき、とにかく北朝鮮の鉄道について知りたいと思いました。当時私は営業部にいましたので、編集は書籍編集の同僚にお願いしました。地球上の鉄道の中でも、もっとも現状が分かっていないのが、北朝鮮の鉄道です。しかもそのほとんどは戦前に日本が敷設し、システムも持ち込んだ鉄道。それがどうなっているのか、私にとっては売れるかどうかの問題ではありませんでした。
 粗末な紙に印刷された路線図と時刻表に興奮を覚えました。さらに写真や動画までありました。半年余り、路線図にあるハングルの駅名との格闘しました。
 こうして鉄道地図、時刻表、車両リスト、それにDVDまで付いた本ができあがりました。今見返しても、これを越える北朝鮮の鉄道の本はありません。もちろんまだまだ謎がたくさん残っています。この本に関わって以来、北朝鮮の本を意識して読むようになりました。それはいつかこの国の鉄道の全貌を明らかする「北朝鮮鉄道旅行地図帳」を編集することを夢見ているからです。名駅舎や絶景車窓などを探しながら、列車に乗ってみたい。
 編集する心の準備はできています。

追伸
 先日上野動物園モノレールの駅の改称日について、誤りがあるのではないかと書きました。昨日東京都交通局に問い合わせたところ、現在の駅名に改称されたのは、昭和60年4月1日であることが判明しました。ご投稿いただきました「ラ・メール」さんに感謝申し上げます。とともに訂正させていただきます。

編集部 田中比呂之(ひろし)

2014年02月06日   本の話

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