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『線路はつながった 三陸鉄道 復興の始発駅』は本日発売です

20140228_01.jpg 自由席トップ画面にひと月ほど前から、『線路はつながった』の画像を掲出しています。この本が本日書店に並びます。

 この本は三陸鉄道の社員である冨手淳さんが震災後の3年間を綴った手記です。三陸鉄道は東日本大震災で大きな被害を出し、その直後、津波で破壊され消失した北リアス線島越駅付近の瓦礫の中で、冨手氏と望月社長は立ち尽くします。
 しかし帰社した望月社長は社員を鼓舞するように言います。「落ち込んでいる暇はないぞ」「会社を潰したくなかったら、気合いを入れてやれ」。日を置かず、「3年で復旧」を宣言しました。5日後には久慈野田玉川間に列車を走らせ、9日後には宮古田老間にも列車を復活させました。瓦礫の中を走る列車。これは存続の意志を力強く表現することになりました。
 原爆投下数日後に動き出した広島電鉄や関東大震災後に無賃輸送を行った国有鉄道になぞらえる人もいました。鉄道は動いてこそ鉄道、希望の光ともなることを三陸鉄道は教えてくれました。
 私は東日本大震災が起こり、太平洋沿岸に甚大な被害出ているのを見聞きした際、自分にできることはないかと考えました。すぐに考えついたのが、まず鉄道の被害状況を記録に残そうということでした。4月中に鹿島臨海鉄道や常磐線の取材に行き、ゴールデンウイークに三陸鉄道を訪ねました。
 鉄道趣味の仲間に三陸鉄道に勤める冨手さんの大学の後輩がいて、その人に紹介してもらいました。東日本大震災の鉄道被害の記録は、日本鉄道旅行地図帳「東日本大震災の記録」としてまとめました。また取材で撮影した膨大な写真の一部はWebサイト「東日本大震災の記録 写真サイト」でご覧になれます。
20140228_02.jpg (C)Kouji Yoshimoto
 その後も冨手さんには情報提供や取材協力などでお世話になりました。翌年3月には「東日本大震災の記録」を発展させたコミック「さんてつ」(小社刊)を同僚が編集し、やはり取材では冨手さんにお世話になっています。冨手さんもコミックに登場します。
 三陸鉄道は少しずつ、しかし着実に復旧区間を伸ばしていました。昨年4月には南リアス線吉浜間が復旧し、望月社長が宣言した「3年で復旧」に現実のものになってきました。
 冨手さんにこの3年間のことを本にまとめませんか、とお話をしたのはこの南リアス線取材の頃でした。NHK朝ドラマ『あまちゃん』が始まり、三陸鉄道の知名度も注目度も日に日に高くなっていきます。
 そうした三陸鉄道の復旧への物語は、もちろん簡単ではありません。地方の第3セクター鉄道が地力でできることには限界があります。しかし諦めては会社がなくなります。自力と他力をコントロールしながら、復旧への階段を登っていきます。その当事者のひとりとして冨手さんに綴っていただいた三陸鉄道の3年間です。
 さらに復旧したからこれでいい、ということではありません。もともと厳しい経営環境だったのに、大震災でさらに厳しい状況になっています。太平洋沿岸の被災地域の復興もまだまだ道半ばです。サブタイトルに「復興の始発駅」と入れましたが、今年4月の三陸鉄道の「全線復旧」が終わりではなく、新たな始まりであるという意味を込めました。
 是非、皆様に御一読いただければと思っています。

編集部 田中比呂之(ひろし)

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2014年02月28日   東北   タグ : さんてつ, 三陸鉄道, 東日本大震災

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