ホーム > Web日本鉄道旅行地図帳 BLOG 悠悠自鉄 > 近畿 > 尾鷲に行ってきました
尾鷲に行ってきました

 日曜日、早起きして三重県の尾鷲に行ってきました。尾鷲にある三重県立熊野古道センターで「大杉谷森林鉄道 記録フィルム映写会&座談会」という催しがあり、こういう機会でもない限り、尾鷲に行くことはないだろうと思って行ってきました。

 新横浜6時発の「ひかり」に乗り、名古屋で特急「南紀」に乗り換えると午前中に尾鷲に着きます。実際には三瀬谷で降りて、あとから来る普通に乗り換えて、尾鷲に12時頃に到着。
 やはりというべきなのか、雨が降っていました。タクシーで10分ぐらいで熊野古道センターに着きます。木造の巨大な建物が、海を見下ろす丘の上に建っていました。木造のためか、大きな建物にもかかわらず威圧感がありません。ちょうど受け付けが始まっていて、100平米ほどの部屋に入りました。
20140304_01.jpg  こう言っては失礼かも知れませんが、森林鉄道の映写会・座談会にそれほどの人が集まるとは思っていませんでした。しかし30分前から続々と人々が入室し、15分前にはほぼ満席。それでも人がどんどん来て、70席を80席にした上、通路にも椅子を入れていましたが、ついには立ち見も出ました。おそらく100人を超えたのではないかと思います。
 使用された部屋は天井が高く、壁と天井はすべて木製で、かなり居心地の良い空間でした。ここで音楽を聴いたら気持ちいいだろうな、などと考えているうちに会が始まりました。
 この会の講師は2人でした。片岡督(ただし)さんと曽野和郎さん。お二人は昨年『三重県の森林鉄道 知られざる東紀州の鉄道網』を共同執筆されています。2人とも三重県ご出身で、現在も県内に在住。この本をきっかけとして、大杉谷森林鉄道の記録フィルムと合わせ、今回の映写会・座談会となったようです。
20140304_02.jpg  実は私は会場でこの本を買おうと思っていたのですが、ネットで申し込んで買うオンデマンドの出版。つまり申し込みごとに本を造って注文者に送る仕組みだそうで、会場では売っていませんでした。この本については手に入り次第、ご紹介しようと思います。
 最初に片岡さんが東紀州(私には初耳の表現です)の森林鉄道について大まかな説明をされました。鉄道の他に、インクラインや索道があったことが知らされました。どうも聞き手の方が「それはわかっている」風でした。つまり大半が地元のしかも何らかの形でこの森林鉄道に関わりのある人たちが今日の聴衆のようです。
 次に壇上に立った曽野さんは、鉄道趣味の人ではなく、山登りの専門家で片岡さんが研究された森林鉄道の軌道跡を辿る役割で、地形図で曽野さんが実際に辿った軌道跡を写真と共に示しながら、いわば現状報告を聞かせてくれました。鉄道史研究の王道を二人で分担したわけですね。しかも森林鉄道の廃線跡巡りは山歩きの専門家でないとかなり危険を伴います。実際、軌道跡探索中に行き倒れた人を発見したエピソードも紹介されました。
 その後、「大杉谷国有林をたずねて」という営林署が作製した記録フィルムを観ました。昭和42年製作カラー作品。素人が撮影した動画だと思っていたのですが、ちゃんとした記録映画でした。ナレーションも音楽も入っていて、この時代のニュース映画のようでした。
 さらに座談会では先のお二人と森林鉄道の元運転士だった瀬戸修三さんが壇上に座り、おもに瀬戸さんに質問をするという形で座談会が進みました。会場からも手が上がっていろいろ質問が飛び、やっぱり、ここに集まった人たちは尾鷲が林業で栄えた時代を知っている人々だったんですね。私には予想外の展開でしたが、知らない土地に来て地元の人たちが楽しそうに、懐かしむように応答する姿をみることは、特に嫌な感じはなく、楽しい時間を過ごすことができました。
 鉄道趣味の中でも、森林鉄道の愛好家はかなりマニアックな人々だと思いますが、こういう展開もあるのかと、鉄道の奥の深さを感じることができた尾鷲の1日でした。

編集部 田中比呂之(ひろし)
0228_santetsu.jpg

2014年03月04日   近畿

PAGE TOP