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東北新幹線「はやぶさ」料金の謎 前編  重岡宗太郎

 東北新幹線に「はやぶさ」が登場して3年以上が経過しました。斬新なスタイルのE5系はいまだに人気があり、駅では大人も子供も一緒になって写真を撮る姿が見られます。E5系の増備が進み、「はやぶさ」だけではなく「はやて」や「やまびこ」にも充当されるのを見て、あらためて「はやぶさ料金」とはスピード料なのか設備料なのか、という疑問が脳裏をかすめます。以下、規則に精通する重岡さんに解説をお願いしました。(編集部)

 東北新幹線〈はやぶさ号〉は国内最高速度の320km/hで運転される列車で、秋田新幹線〈こまち号〉を併結する列車もあります。今回は〈はやぶさ号〉に適用される特急料金について考察してみます。
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1.〈はやぶさ号〉特急料金の性格
 〈はやぶさ号〉は併結して運転される〈こまち号〉とともに、〈はやて号〉や〈やまびこ号〉よりも高い特急料金が適用されます。ただし、特急料金が割増となっているのは320km/h運転を行う大宮~盛岡間に限られていて、東京~大宮間及び盛岡~新青森間だけを利用する場合は〈はやて号〉や〈やまびこ号〉と料金差はありません。これは、最高速度が東京~大宮間は110km/h、盛岡以北は260km/hに抑えられているためと思われます。
 そのため、〈はやぶさ号〉特急料金は、これまでの列車よりも高速運転することへの対価(=時間短縮効果)としての性格があると考えられます。
 ちなみに、東海道・山陽新幹線の〈のぞみ号〉も〈はやぶさ号〉と同様に〈ひかり号〉よりも高い、特急料金が設定されていますが、こちらの場合は東海道・山陽新幹線の全区間で割増となっていて、速度差は全くない東京~品川間の利用であっても〈ひかり号〉に比して210円高くなっています。
 この辺りは、JR各社によって考え方の違いがあるようです。なお、山陽・九州新幹線で運転される〈みずほ号〉は割増の特急料金が適用されるのは山陽新幹線部分のみで、整備新幹線として開業した九州新幹線内は最高速度が260km/hとなるため、他の列車と料金差はありません。

2.〈はやぶさ号〉特急料金の規則上の定義
 それでは、JRグループの共通約款である旅客営業規則では、どのように定義されているのでしょうか? 旅客営業規則はJR西日本などでは駅に閲覧用の冊子が備え付けられていたりしますが、JR各社のWebサイトでも閲覧することができます。
 まず、〈はやぶさ号〉特急料金を適用する列車は旅客営業規則(以下、「規則」とする。)第57条第8号では次のように規定されています。

(該当部分のみ抜粋)  東京・新青森間を運転する特別急行列車はやぶさ号又は東京・盛岡間を運転する特別急行列車こまち号(以下「はやぶさ号等」という。)

 また、規則第125条第1号イの(イ)のCにおいて、「はやぶさ号等に対して適用する指定席特急料金」は「別表第2号ナの2に定める料金」と規定されています。規則の文面は「別表第2号ナの2」と書かれただけでは何のことか理解できないかもしれませんが、要は大型時刻表のピンクのページに掲載されている〈はやぶさ号〉を利用する場合の特急料金を示した三角表のことです。
 余談ですが、この別表はJR東日本のWebサイトでは内容省略とされていて閲覧することができませんが、JR東海のWebサイトでは内容が省略されることなく閲覧することができます。
 少し前置きが長くなりましたが、〈はやぶさ号〉に対する特急料金は東京~新青森間の〈はやぶさ号〉か、東京~盛岡間の〈こまち号〉という名前の列車に対して適用されるものであり、列車名が〈はやぶさ号〉か〈こまち号〉であれば、車種、最高速度や途中停車駅等は無関係ということになります。
 ところが、〈はやぶさ号〉に対し、高い特急料金を設定した趣旨と矛盾する事例がいくつか生じています。

3.〈はやて号〉よりも遅い〈はやぶさ号〉
 〈はやぶさ号〉の仙台以北の停車パターンは複雑で、盛岡駅のみ停車の最速達パターンもあれば、仙台以遠が各駅停車になる列車もあります。「地元の駅に、はやぶさ号を停車させよ!」という要望などを考慮した結果とは思いますが、例えば仙台~盛岡間をノンストップで運転する列車と各駅停車となる列車では所要時間差が大きくなるのは必然です。
 そのため、仙台以北で停車駅が多い〈はやぶさ号〉よりも、停車駅の少ない〈はやて号〉の方が目的地までの所要時間が短いケースが生じ、高い特急料金を必要とする〈はやぶさ号〉よりも、〈はやて号〉の方が安くて速いという逆転現象が発生しています。
 平成26年4月号の時刻表から、いくつか例を掲げてみます。

・はやぶさ103号 東京18:56→21:43盛岡  2時間47分
・はやて 351号 東京 7:04→ 9:36盛岡  2時間32分(△15分 料金差△510円)
・はやぶさ 15号 東京10:40→14:09新青森 3時間29分
・はやて 351号 東京 7:04→10:29新青森 3時間25分(△4分 料金差△510円)

 例に掲げた〈はやて号〉は比較的停車駅が少ない速達列車、一方の〈はやぶさ号〉は一部区間で各駅停車になるため、所要時間に差が生じてしまうのです。
 山陽新幹線区間における〈のぞみ号〉でも停車駅の多寡による所要時間差は生じていますが、東北新幹線の場合は停車駅が多いためその差が目立ちます。

 やはり「はやて」より遅い「はやぶさ」が走っていました。明日は「はやぶさ」にはないはずの「自由席」にも言及していただきます。
筆者名はペンネームです。(編集部)


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2014年04月17日   鉄道規則話   タグ : はやぶさ, 東北新幹線

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