過日、ある方から切符のコレクションを80枚余りお預かりしました。匿名がご希望なのでお名前は秘します。戦前の私鉄の切符がほとんどで、鉄道名は知っていても、写真なども見たこともない鉄道もいくつかあります。
こうして実物の切符を見ると「本当にあったんだ」という妙な感想を抱きます。写真よりある意味実感がありますね。整理がつき次第順次Webにアップしていきたいと考えています。発行日など最低限の調査などをしてからとも思いますが、実はこれがなかなか大変です。
昨日日光電車(のちの 東武日光軌道線)の切符数枚の発行時期を会社で調べようとしましたが、2時間ぐらいかけて、結局「大正から昭和初期」みたいな大雑把な時期しかわかりませんでした。同じようなタイプの切符を3枚並べてみます。1区券が2枚と2区券です。時代特定の手がかりはまず駅名。3枚とも右端の駅名は停車場前です。国有鉄道日光駅ですね。左端を見ると1区券の1枚と2区券は「中善寺口」になっています。残りの1区券は「馬返」ですね。
終点が「中善寺口」だった時期は昭和初期のごく短い時期だけなので、この2枚はある程度時期が絞れます。「馬返」はこの軌道線が開通した当初の駅名で、昭和初期から昭和7年ぐらいまで「中善寺口」と名乗り、そのあとまた「馬返」に改称しています。
では「馬返」の1区券はいつ頃の切符でしょうか。これを調べる手立ては、運賃です。1区の運賃がいつから5銭なのかを突き止めれば、時期が絞れます。それで編集部にある時刻表を駆使して調べようとしたのですが、そう簡単ではありませんでした。同時に調べたタイプの違う切符もご紹介しておきます。
この日光電車の切符を見て最初に気づいたのは、ローマ字表記があることでした。さすが日光ですね。大正から昭和にかけてすでに外国人向けに観光開発をしていた証しということでしょうか。
私は切符について知識がないので、驚きばかりが先行しますが、この2枚にも驚きました。いずれも専用線の「乗車証」です。貨物輸送のための鉄道ですが、従業員やその家族を乗せるためにこのような切符を発行したのでしょう。
左は専用線時代の 三菱大夕張鉄道の切符です。二股はのちの南大夕張です。右は北海道炭礦汽船の若鍋(若菜辺?)専用線の切符だろうと思います。調べが済んでいないので、あまり書けません。こちらは「乗車券」と書いてあります。「日本鉄道旅行地図帳」の北海道編で苦労して調べたにもかかわらず、よくわからなかった路線だということを思い出しました。
最後に券面を見て発駅も着駅も思い当たらず、もちろん鉄道名もわからなかった切符を2枚ご紹介しておきます。お時間のあるときにでも検索してみてください。
切符調べは、たいへんですが、楽しい迷宮です。
編集部 田中比呂之(ひろし)