乗り放題系の切符は、鉄道趣味と深くつながっています。もう少し踏み込んで言えば、鉄道趣味を育ててきたといっても言い過ぎではないでしょう。
自分自身のことで言えば、しっかりと計画を立てずに出かけたり、計画を立てていても行った先で必ず気が変わる。そんなときでも、フリー切符であればたいてい何とかなります。
もっともフリー切符の代表格である「青春18きっぷ」はほとんど使ったことがありません。最近はかなり事情が変わってきていますが、特急・急行にも乗ることができるフリー切符が全盛の頃は、そちらを選んでいました。途中で特急や急行に乗りたくなることも日常茶飯事だからです。
JR化直後は、ちょうど私が乗りつぶしに全国を奔走していた頃にあたり、JR東日本の全線乗り放題切符は重宝しました。しかも今その値段を見ると「驚愕」の値段です。手元に平成4年11月22日から23日に使用した「ハートランドフリーきっぷ」が残っています。因みに私は切符を意識的に集めることはありませんが、手元に残った切符は捨てません。
券面に太字で「東日本旅客鉄道会社線全線」と書かれています。新幹線にも乗車できます。2日間有効で15000円。記名式で、年齢欄まであります。
現在この範囲をカバーする切符は大人の休日倶楽部会員限定で年3回発売されているだけです。もちろんこんなに安くはありません。平成7年には同じ範囲をカバーする切符「ウィークエンドふりーきっぷ」を使いました。値段は同じ15000円でした。
国鉄からJRに組織が変わって、とにかく乗ってもらおうという積極的な会社の姿勢が見えるようです。乗り鉄にはこれほどうれしいフリー切符はありません。前述のように現在同様の切符は会員限定切符しかありません。
先日「SLばんえつ物語号」に乗りに行った際に使用したのは、「週末パス」でした。これは陸羽東線・西線を北限として、乗車券だけのフリー切符。新幹線や特急に乗るときは、そのつど特急券を買わなければなりません。8730円。上記2つの切符とどっちが得かは判断しにくいところですが、開放感や自由度ということで言えば、「東日本旅客鉄道会社線全線」の方に軍配があがるでしょう。もっとも「週末パス」は伊豆急や長野電鉄など私鉄にも乗車できるので、私鉄にも乗る場合は、とても便利な切符ですし、私鉄各社にもお金が入る仕組みになっているそうです。
最近では「休日駅めぐりの旅」でよく利用するのが、「休日お出かけパス」です。この切符にはお世話になっています。以前は「ホリデー・パス」という名前で、東京近郊区間が有効範囲でした。
これが2000円で、さらに範囲を広げた「スパーホリデー・パス」が4000円でした。小海線、日光、黒磯、房総全線などかなり広域で、しかも1日しか有効ではないので、乗り鉄以外にはかえって使いにくい切符だったかもしれません。
「ホリデー・パス」が発売された当初、1日で有効範囲全線を乗りつぶすことを考え、時刻表と格闘した記憶があります。八高線や休日ダイヤの鶴見線などが障害となって、とても乗りつぶすことはできませんでした。
乗りつぶしが目的でない場合、休日にふらっとでかけて、乗ったり降りたり写真を撮ったりするには、ちょうどよい切符です。「休日お出かけパス」は2670円と昔を知る者にはちょっと高い感じがしますが、それでも元は取れます。
フリー切符がリストラの方向に向かっているような気もします。鉄道趣味活動の生命線を断ち切ることのないよう、鉄道各社にお願いをいたします。
編集部 田中比呂之(ひろし)