トーマス列車と大井川鐵道の話を続けます。トーマスを巡る喧噪から目を離してみると、新金谷には鉄道ファンが楽しめる風景がいくつもありました。
まずトーマス列車が停車していたホーム横の側線には、元南海のズームカーが「むっつり」停車していました。ホーム上でトーマスに興奮している客は、おそらくこの電車に気づかなかったでしょう。
トーマス列車に乗るため最後尾に歩いて行くと、最後尾には補機として茶色の電気機関車が連結されていました。大阪セメント伊吹専用線で働いていたED500ですね。さらに少し離れたところには元西武の電気機関車や車庫の中には東急7200形もいます。
車庫のある駅というのは、どの鉄道でもある程度楽しめるものですが、この新金谷ほど楽しめる駅はそう多くはないでしょう。
さてトーマス列車は汽笛一声新金谷を出発しました。と同時に最後尾に乗車した私の耳には、補機のED500の吊り掛け音が聞こえ始めました。旧客の木造車内と吊り掛けの音。それぞれは懐かしくても、同時に味わったことはありませんでした。
どんなに格好良い列車も乗ってしまうと、その勇姿は見られません。車内は窓を全開にしても室温36度。子供たちは静かに乗っていました。いくつかトンネルをくぐりましたが、煙がほとんど入ってきません。わずかに石炭の匂いがしました。
沿線にはカメラを構えた同好の人々がたくさんいました。SL列車には馴れているはずの沿線の人々も手を振っています。猛暑となったこの日、大井川で水と戯れている人々も手を振っていました。さらに露天風呂に入っていた人たち(10数人)まで総立ちで両手を振っています。残念ながら?全員男性でしたが。
こうしてトーマス列車は千頭に到着しました。ゆっくりとホームに降り、余韻を楽しんでいると、入替作業が始まりました。これは私にとっては何よりのイベントです。電車全盛の時代、手間と時間がかかる入替作業はほとんど見られなくなっています。
ますトーマス列車の補機を務めたED500が切り離され、バックしたのちすぐ横の線路を前方に走って行きました。次にトーマス機関車が前方で切り離され、後方に回って連結。目の前で一部始終を見学しました。連結作業が終わると、トーマス機関車がバック運転で客車を引き出しにかかります。後ろにはやはりED500が連結され、2両の蒸気機関車は位置が完全に逆転しました。
本線上まで引き出し、今度は構内奥にある側線へED500を先頭にして入っていきました。7両のトーマス編成を側線に入れると、今度はトーマス機関車だけがバックして、再び前進を始めターンテーブルの前まで来ました。
このターンテーブルは私がいるホームとは別のホームの先端近くにありました。そこには50人ぐらいの人々がいたでしょうか。ターンテーブルに乗ったトーマスは目を動かして、お客さんに愛想を振りまいています。
そうだ動画だ! 目の動きは撮り損ないましたが、ターンテーブル上の一部始終を動画に撮りました。
入替作業といい、ターンテーブルといい、私の琴線に触れっぱなしでした。忙しい最中に頑張って早朝起床した甲斐がありました。この他千頭では私の琴線はなんども揺さぶられました。
トーマスのおかげで予期せぬ楽しい日を過ごしてしまいました。次回の社内鉄道遠足は大井川鐵道にします。
取材協力:大井川鐵道株式会社
編集部 田中比呂之(ひろし)