今年の夏は新幹線の車窓本を編集していて、休日の楽しみである「駅めぐり」ができませんでした。ようやく編集作業が一段落したので、新京成全駅巡りにでかけました。毎年夏休みに発売されるらしいフリーきっぷが、今年も発売されることはホームページで確認しました。
珍しく知人2人を誘って津田沼へ向かいました。JR津田沼から新京成に乗り換えるのは何年ぶりでしょうか。もっと近いと思っていました。新津田沼駅の窓口で「フリーきっぷ3枚ください」と言うと、若い駅員さんは「フリーきっぷはありませんけど......」。その応えに意表を突かれましたが、「ホームページに載っていますよね」と言い返すと「夏休みきっぷなら枚数限定で売り切れました」と素っ気ない答え。
日曜日の朝から津田沼まで来てるのにと思いつつ、「だったらホームページに売り切れと出してくださいね」とちょっと語気を強めました。このブログを書いている26日未明でも、「乗りトク!楽しみ満載夏休みきっぷ」の案内に変化はなく、私のような犠牲者は今週も出る可能性があります。
というわけで2人を誘っておいてこの態。気を取り直して内房線の旅に切り替え、浜金谷からは久しぶりにフェリーに乗ることにしました。
津田沼から千葉へ。大工事中の千葉で駅そばを食べ、木更津行き209系に乗車。最後尾車両のボックス席に座って雑談しながら木更津をめざします。たまには複数で電車に乗るのも良いですね。車窓はおろそかになりますが、これは仕方がありません。
木更津で改札を出るのは初めてかも知れません。コンクリート駅舎でした。駅前には1階が改装中の人気がないビルが建つ。駅前には人影はまばらでしたが、人気のアウトレットモールには人が溢れているんだろうなどと考えました。汗が滴り落ちます。
久留里線のキハE130などをホームで撮影して、安房鴨川行き209系に乗車。3人でボックス席に座り、再び夏の内房線を楽しみました。君津から先はほぼ1時間毎のダイヤになるので、簡単に下車するわけにはいきません。良さそうな駅舎がある駅で降りようと駅に近づくたびに駅舎を目で探しました。
屋根瓦が水色の駅舎が続くことに気づきました。木造駅舎に水色の瓦が載っています。なにか不思議な明るさがあります。上総湊を過ぎ、竹岡で降りてみようかと同行の遠藤則男さんが言うのでそのつもりでいると、なんと駅舎がありませんでした。次はフェリー乗り場のある浜金谷。ここで降りてしまうとフェリーに乗るしかなので、それで保田まで行くことにしました。
保田の駅舎も水色の瓦を載せていました。駅前側の壁にはかつて海水浴客が溢れていた頃に使用されたであろう臨時出札窓口が3つ並んでいました。保田が有名海水浴場だったことは最近まで知りませんでした。昭和20年代から30年代にかけて東横線沿線から保田までの海水浴切符が発売されていたことを知る人は、今ではそう多くないでしょう。高島町から保田まで船が往復したそうです。現在では想像すらできません。
駅から徒歩3分ほどの海岸に出てみると、海水浴を楽しむ人々がいて、海の家もあります。ひっそりとした浜辺の風景を見ながら一服。駅に戻ってもまだ電車まで時間があるので、さらに隣の安房勝山に行きました。ここの駅舎も水色の瓦です。
上り電車で浜金谷へ。ここのホームと跨線橋からの鋸山の景色は絶景ですね。ロープウェイも見えます。駅舎の撮影をしていると、駅名看板が面白い形をしていることに気づきました。どうも鋸山を模したようです。
新京成の全駅訪問は果たせませんでしたが、自宅で目覚めたときは想像もしなかった内房線で、夏の旅を満喫してしまいました。フェリーのデッキから鋸山の奇観を眺めながら、今度はあの上に登ってみようかと思いました。
編集部 田中比呂之(ひろし)